伝統をアップデートする|やまと
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伝統を常にアップデートし続けるという企業理念に基づき、アウトドアブランドやフランス発のファッションブランドとの提携により、異業種・多文化を積極的に導入。伝統に守られた着物を現代に合わせて進化させ、より多くの人に届けるための市場価値を創造しています。
「文化をアップデートする」ためのパリ進出
私たちは着物という長く続く文化をアップデートすることがミッションだと思っており、そのための一つの手段でした。
文化とは「保存」するものではなく、時代に合わせて変化させるものです。例えばラーメンも、海外の食文化を取り入れて日本独自の文化になりましたよね。文化は、異なる文化と交わる場所でこそ進化すると考えています。
だからこそ、日本国内に留まるのではなく、ファッションとアートの中心地であるパリに身を置き、そこで反応を得ることで着物文化をアップデートしたい。その想いがきっかけです。
いえ、実は私、当初は「やまと」を継ぐ気は全くなかったんです。
両親が離婚していたこともあり、父とは離れて暮らしていました。「自分のやりたいことをやろう」と、最初は消防士になり、その後はホテルマンとして働いていました。
転機は29歳の時、父が倒れたことです。継ぐことを打診されましたが、最初は断りました。そんな悩みの中にいた時、祖父の代からお世話になっていた弁護士の先生から言われた言葉が、私の人生を変えました。
『あなたがこの仕事に就く方が、1人でも多くの人を笑顔にできるはずだ』
はい。その言葉で創業家の息子として『やらねばならぬ』という、どこか反発したくなるような漠然とした義務感が、「この仕事で社会に貢献したい」という意志に変わりました。
そしてその想いは、祖父である創業者の代から脈々と受け継がれている『100万円の着物を1人に売るより、10万円の着物を10人に買ってもらうことを幸せに思う』という経営哲学とも完全に一致していました。
一部の富裕層だけに向けたビジネスではなく、一人でも多くの人に着物を届けたい。だからこそ、国内だけでなく海外にも「裾野」を広げ、挑戦を続けているのです。

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海外文化の洗礼を受けたオープニング
パリコレに代表されるように、世界中からファッションやアート、カルチャーが集まる街です。そこに、私たちが革新的だと考える着物を持ち込み、世界の一流の目からの反応や意見をもらう。そうすることで、日本国内にいるよりも圧倒的なスピードで、着物文化を進化させられると考えました。

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2023年にフランス支店をつくり、2024年4月にパリで初出店するまで、本当に色々なことがありました。ただ、常に挑戦している感覚ですので、失敗を感じて落ち込んでいる暇があったら、すぐに次の一手を考える。そういう状態で走り続けてきました。
しかし、その中でも「これはまずい」と一番肝を冷やした出来事は、2024年4月のフランス・パリ店のオープンの時です。オープニングパーティーの招待状を、現地のプレス関係者など500名に送っていましが、直前になって、「工事が間に合わない」という連絡が入ったんです。
実際に見に行くと、工事は3割ほどしか終わっておらず、什器(棚など)もない。招待客は来るのに、店としての商品陳列が全くできない状態でした。
嘆いていても店は完成しません。そこで即座に頭を切り替えました。「完璧な店舗を見せる」ことは諦め、「ブランドの世界観を見せるエキシビション(展示会)」にしようと。
什器がないなら、あるものだけで演出するしかない。そこで、通常の店舗よりも多くのトルソ(マネキン)を配置し、頭部に食材を使ったヘッドピースを飾ることで、着物とアートを融合させたインスタレーションを行いました。
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結果的に200名以上の方が来場し、非常に高い評価をいただきました。むしろ、もし工事が完成して什器が入っていたら、これだけの人数は入りきらなかったかもしれません(笑)。
海外では、日本のように「言った通りに事が運ぶ」ことは稀です。ないものはない。そこでイライラするのではなく、「今あるもので、どうやってお客様を楽しませるか」へ思考を切り替える。この「切り替えの速さ」こそが、海外展開において最も重要なスキルだと痛感しました。

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パリ進出がもたらした「組織の変革」
ビジネスとしての数字はこれからですが、「社内の意識」が劇的に変わったこと。これが最大の成果です。
かつては「チャレンジスピリッツ」と掲げても、現場は「失敗したらどうしよう」と二の足を踏んでいる社員もいました。しかし、2023年のフランス支社を作ってから、フランス初出店までのこのチャレンジスピリッツが、社員の中に「本当に挑戦していいんだ」という安心感を生んだのです。
もともと「文化のアップデート」の一環として、異業種とのコラボレーションには取り組んできました。
わかりやすい例としては、アウトドアブランドの「スノーピーク」さんと共同開発した「アウトドア・キモノ」や、フランス発のファッションブランド「agnès b.(アニエスベー)」さんとのコラボレーション着物などがその代表例です。
今後は、この「共創」の舞台をさらに世界へと広げ、日本国内だけでなく、世界中の文化と交わることで、着物を次のステージへと進化させていきたいと考えています。
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「背中」で語り、「挑戦」を日常にする組織づくり
組織づくりにおいて痛感しているのは、口で「挑戦しろ」と言うだけでは、人は動かないということです。
「失敗したらどうしよう」と踏み出せない社員に、スローガンだけ掲げても意味がありません。経営者自らが、リスクを取って大きな挑戦をする「背中」を見せること。それが一番の組織改革になります。
経営者が先陣を切って挑戦し、失敗もさらけ出す。そうすることで、社員が安心して挑戦できる土壌が育つのだと思います。
私たちは着物を「守る」のではなく、ビジョンに掲げている通り、着物で「エキサイティングな世の中」をつくりたい。そのために、これからも私自身が一番のチャレンジャーであり続けたいと思います。

グローバルニッチトップ事業本部 取締役
日本企業が海外で持続的に成果を上げるための戦略をリードしている。
異文化との交わりが、着物を次の100年へ運ぶ原動力になる。
やまとが取り組む “伝統のアップデート” は、単なる商品開発ではありません。 スノーピークやagnès b. といった異業種との共創で新しい解釈を生み出し、 その価値をさらに磨く舞台としてパリという多文化の中心に挑戦した。
国内の価値観に閉じず、外の文化とぶつかることで、 着物は「日本の伝統工芸」から「世界に届く表現」へと進化する。 やまとの歩みは、伝統産業がグローバルで再定義されるプロセスを体現する、極めて示唆に富んだモデルです。
やまとの基本情報
1917年創業の着物専門店。より多くの人に着物文化を届けるため、洗える着物や木綿の着物など“入り口”を広げる商品を展開。さらにスノーピークやagnès b.とのコラボを通じて、異業種・多文化と共に「着物と日本文化をアップデートし続ける」ことをミッションとしています。
| 会社名 | 株式会社やまと |
|---|---|
| 所在地 | 東京都渋谷区千駄ヶ谷5ー27ー3 |
| 代表者 | 矢嶋 孝行 |
| 創業 | 1917年(大正6年) |
| 事業内容 | 着物専門店 |
| 海外展開地域 | フランス |
| 公式サイト | https://www.kimono-yamato.co.jp/ |
本記事はFM軽井沢のラジオ番組「軽井沢ラジオ大学」での対談を再構成しています
このインタビューは、FM軽井沢にて放送された「軽井沢ラジオ大学」 株式会社やまと 代表取締役社長 矢嶋孝行氏 × Zenken株式会社 取締役 本村 丹努琉 氏の対談をもとに編集しています。
