海外のニッチトップ戦略を見る【ドイツ編】

ここでは日本の中小企業が海外のニッチトップ戦略を考える上で、ドイツ企業のどのような行動が成功につながったのかを解説。企業事例から学べるポイントを紹介しています。
ドイツはなぜ
国際競争力があるのか
世界の貿易輸出額ランキング(2021年)の資料によると、ドイツの輸出額は1,688,419ドル(※)で中国(3,380,025ドル)、アメリカ(2,019,542ドル)に次ぐ第3位、日本は717,315ドルで5位となっています。
ドイツの国土面積は日本とほぼ同じで、人口はドイツのほうが少ないにも関わらず2倍以上の金額差があります。しかも、ドイツは2021年から輸出額が右肩上がり、一方日本は下落が続いています。
この差が生まれた背景にあるのは小規模海外市場への対応力の違いです。日本においては輸出を引っ張るのは、大企業の製品が中心。一方、ドイツでは中小企業が中心となり、市場は小さくても付加価値の高い製品を輸出しました。
これはグローバルニッチトップ戦略そのものであり、日本が出遅れている部分です。日本の国際競争力を上げるためにはこうしたドイツの考え方をいかに学び、実行できるかにかかっているといっても良いでしょう。
※単位:100万USドル
日本とドイツの比較データ
| 日本 | ドイツ | |
|---|---|---|
| 面積 | 約37.8万㎢ | 約35.7万㎢ |
| 人口 | 1億2,454万人 (2023年8月、統計局) |
約8,482万人 (2023年6月、独連邦統計庁) |
| 名目GDP | 42,129億ドル (2023年、4位) |
44,561億ドル (2023年、3位) |
| 一人当たり名目GNI | 39,030ドル (2023年、24位) |
53,970ドル (2023年、16位) |
| 一人当たり労働生産性 | 85.329 USドル (2022年、OECD加盟38か国中31位) |
125.163 USドル (2022年、OECD加盟38か国中15位) |
ドイツのグローバル
ニッチトップ戦略とは?
事例からひも解く
ベグラのケース
どういった会社か
ベグラは自動車の青銅軸受製造と銅金型鋳造を主力にした企業です。従業員数100人を超えたくらいの中小企業ですが、フォルクスワーゲン、ダイムラー、シーメンスなど世界の大手企業を取引先にしています。自動車部品に求められる耐久性に優れた軸受を製造できるのが強みで、大量生産が可能なのは同社を含め2社のみです。
狙ったニッチ市場
ベグラは知的財産権を保護することを重視した戦略を図りました。自動車メーカーと合わせるように生産拠点を国外に移す企業が増える中でも、追随することなく自社内製造にこだわることで知的財産流出のリスクを最小化したのです。
また自社の販売会社を国外に持つことはなく、代理店や外国企業と提携することで国外販売を展開していきました。代理店に対しては製品の研修も行っていますが、その際も技術的ノウハウの伝達に制限を設ける徹底ぶりです。
成功要因は?
ベグラは自社以外ではなかなか真似ができない技術力を大切にし、それが自信にもなっています。また自動車エンジンの小型化に伴い、軸受に対する高耐久性が求められている流れから、常にニーズがあったことも幸いしました。
金融危機をなんとか乗り越えられたのも、他社に対する技術面での優位性があったからです。現在では自動車分野への依存度を段階的に下げ、リスク分散する方向に舵を切っておりナノテクノロジー分野など新たな道を開拓しています。
テュンカース・マシネンバウのケース
どういった会社か
自動車工場のロボット部品を中心にファクトリーオートメーション製品の製造・販売を行っている従業員600名ほどの企業です。完全オーダーメイドでの開発・生産が求められる中で、顧客ニーズを的確に捉えた提案力を強みとします。フォルクスワーゲン、ダイムラーなど欧州のほとんどの自動車メーカーに納入実績があります。
狙ったニッチ市場
テュンカース・マシネンバウはベグラとは正反対の戦略で、中国・ブラジルなど積極的に国外に生産拠点を置きました。国外の市場開拓を行う際に、現地での生産拠点の設立を求められ、それに応じるかたちで展開しました。
結果的にそうした積極的な国外展開が金融危機による不況に対するリスクヘッジとなり、影響を最小限に食い止めたことで業績悪化を免れました。また今後の経済成長を見越して、アジア市場開拓の布石も打っています。
成功要因は?
積極的な国外拠点展開に成功した理由の一つは、テュンカース・マシネンバウが人材教育・育成に力を注いだことがあります。役員・従業員の研修をドイツ本社で実施し、正確性・几帳面さ・組織力といったドイツ流を教育します。
研修は国内従業員がドイツ以外の商習慣や文化の違いを学ぶ場ともなっており、双方にメリットがあるのもポイントです。現地採用を行いながらも、自社の経営理念や基本方針を浸透させることでブレない経営を可能にしています。
ニッチトップは
激動の時代のいま
必要な考え方
ドイツはグローバルニッチトップの見本となるような展開をしていますが、ドイツ企業の生産拠点展開の例を見ても答えは一つではないことがわかります。肝心なことは、まず自社の強みは何であるかを理解することです。
そのうえで、小規模の市場のなかで高いシェアを獲得し、安定した収益性を確保するためにどう行動するかが重要です。そのなかにはドイツ企業が行ったような、付加価値が低い分野を思い切って切り捨てることも必要になります。
